
個性とは分布の偏りである
汎用性と特化のはざま
一般に、人工知能が進化すればするほど、より多岐にわたるタスクを柔軟にこなす「汎用性」が高まると考えられます。私たちはそれを一つの理想像としてAI/AGIを開発し続け、実際に幅広い分野で実用化が進んでいます。しかし一方で、人間が何らかの領域において「突出した個性」を得るのは、むしろ汎用性とは対極にある「分布の偏り」なのではないでしょうか。
たとえば、数学が得意な人、音楽で独創的な才能を発揮する人、交渉術やコミュニケーションに長けた人など、その特長を目で見える形で数値化すると、いわゆる「平均点の高い人」よりも、ある一つの分野で飛び抜けた部分が目立つかもしれません。それこそが個性という分布の偏りにほかなりません。汎用的であることが美徳とされるAIの時代だからこそ、人間が持つ特化型の才能や、そこからくる創造性が改めて注目されているのです。
一点が足し算になると幅が広がる
この個性は、一点にだけ固執していては多様な状況に対応できず、自己成長を閉ざしてしまう恐れがあります。しかし、複数の“突出点”が足し算的につながると、一人の人間が発揮できる総合的な幅が広がり、「使いどころ」によっては柔軟にバリエーションを生み出すことが可能になります。
たとえば、プログラム設計に強い個性を持つエンジニアが、同時にデザインセンスやマーケティング思考にも少しだけ長けていると、それらの組み合わせは多面からのアプローチを生み出し、プロジェクト全体でより大きな成果を出せるようになります。こうして一点+一点の足し算が重なることで、個性を活かした幅広い活躍が期待できるのです。
掛け算としての唯一無二
さらに、それぞれが高いレベルで突出している要素同士が掛け算として結びついたとき、その人の総体的な個性は「唯一無二」と呼べる領域へと飛躍します。言語学に卓越した才能を持つ人が、独特の世界観を描く芸術性を併せ持ち、かつ高度なプログラミングスキルを身につけているとしたら、その能力は相乗効果によって、まったく新しい価値を創造できる可能性を秘めているでしょう。
こうした「足し算から掛け算」へと至る段階では、本人の飽くなき探究心と学習の継続が大切になります。同時に、周囲の環境やコミュニティがそれを後押しし、異なる個性同士が出会い、刺激し合うことで、さらに多様性の高い才能が組み合わさることが期待されます。
MyTHのGOA構想
私たちMyTHでは、こうした個性の偏りを集積し、掛け算として最大限に引き出す場をつくるべく「GOA」構想を進めています。これはまさに、一人ひとりが持つ“非対称的”な突出点を尊重し、それぞれが違う軸で自分を磨き上げていくプラットフォームを目指す試みです。
AIが汎用的にどんなタスクもこなせるようになる時代にあっても、人間が持つ尖った部分こそがユニークさを生み出し、イノベーションの原動力になると信じています。GOAはその尖った部分をさらに研ぎ澄まし、繋げ、掛け合わせることで、新しい価値創造を加速させるコミュニティを形成しようとしています。
集まる個性が未来を切り拓く
私たちは、分布の偏りこそが人間の本質的な魅力であると考えています。だからこそ、AIがますます汎用化していく今こそ、一人ひとりが持つ特異性・特化性を活かす場を整えたいのです。もし「平均点」を目指してすべてを丸く収めるなら、それはAIに代替されてしまう可能性が高いでしょう。しかし、あえて尖り、そこにAIの強みを掛け合わせることで、人間の価値はこれまで以上に高まります。
MyTHのGOA構想は、個々の偏りを歓迎し、掛け合わせることで唯一無二の人材が数多く生まれる場を作ることをビジョンとしています。私たちはその小さな火種を絶やさずに育てることで、より多様で豊かな未来を創造したいと考えています。これからの時代に求められるのは、AIの汎用性と人間の個性が交差する領域で、新しいストーリーを築いていくことではないでしょうか。