爆速開発とはいかにボトルネックをなくすかである

爆速開発とはいかにボトルネックをなくすかである

「爆速」の本質はどこにあるのか

近年、いわゆる「爆速開発」という言葉が散見されます。短期間でサービスを立ち上げ、ユーザーテストを行い、改善を繰り返す。そのスピード感はスタートアップ界隈で賛美されがちです。

しかし、爆速開発とは単に「早く手を動かす」ことではありません。むしろ、いかにボトルネックとなる箇所を迅速に見極め、それを取り除いていくかが鍵となります。

8割を占めるプロセスの罠

多くの場合、開発プロセスには必ず「時間を食う」ボトルネックが存在します。例えば全体の8割の時間を占める、巨大な手間のかかるプロセスがあったとしましょう。

このとき、残りの2割の作業をどれだけ10倍速くしたとしても、全体が圧倒的に速くなることはありません。なぜなら、2割×10倍の効率化は2割→0.2割=20%→2%といった変化で、全体ではせいぜい18%程度の削減にしかならないからです。

一見「ちょっと速くなった」ようでも、本質的な「爆速」とは程遠い。これが、ボトルネックを無視した改善の限界です。

「爆速」の神話とMVPの現実

巷で語られる「爆速」は、多くの場合、その段階では完成度が完璧ではありません。むしろ、粗だらけで未完成でも、ユーザーに価値を提供する最小限の形、いわゆるMVP(Minimum Viable Product)を投入し、そこで得たフィードバックを使ってブラッシュアップしていくスタイルです。

「神話的な爆速」は幻想で、実際に目を凝らしてみれば、慌てて走りながら形を整えている状態がほとんどです。しかし、その試行錯誤の中で、確かに何か「伝えたい価値」を最低限ユーザーに届けることには成功しています。

本質でないところを捨てるか、それとも悩まない仕組みを構築するか

最も悩ましいのは、ボトルネックと直結しない「本質でない」領域へのリソース配分です。時間を割かなくても、あるいは考えずとも勝手に解決する仕組みがあれば、その分、真のボトルネックへの集中が可能となります。

選択肢は二つあります。ひとつは本質ではない部分を「思い切って捨てる」こと。もうひとつは、最初から「悩まなくてもいい」状態、つまり自動化や仕組み化によって問題を消し去ることです。

若手スタートアップは前者で走り出すことが多い

理想を言えば、後者の仕組み化・自動化によって悩みの種を取り除きたいところ。しかし、特に若手のスタートアップや初期段階のプロジェクトでは、その余裕がありません。

まずは不要な要素をバッサリ切り捨て、必要最低限の機能と価値にフォーカスしてリリースする。爆速開発の初期段階は、往々にしてこのアプローチでスタートします。

AIエージェントの活用は後者への道筋になるかもしれない

では近年注目を集めるAIエージェントはどうでしょうか。AIエージェントの活用は、まさに「悩むことすら必要ない」状態へ近づく一歩になり得るかもしれません。

ただし、どれだけAIが支援しても、開発の初期段階で必要な「初期インプット」や「設計思想」を練る時間、いわば「シンキングタイム」は残ります。ゼロから考えなくてもよい環境はまだ実現していません。

「初動」力がカギを握る

そこで、我々がnoteでも記事にした「初動」力が重要になってくると考えています。初動力とは、開発や思考プロセスの最初の一歩を、どれだけ素早く、効果的に踏み出せるかを示す概念です。

この初動力を高めることで、たとえボトルネックとなるプロセスが残っていても、そこに取りかかるまでの不必要な準備時間を圧縮できます。結果として、全体のスピードアップにつながっていくわけです。

初動力についてはnoteで詳細に解説している有料記事もありますので、興味がある方はぜひそちらもご覧いただければと思います。

新しい「爆速」への挑戦

「爆速」を実現する道は、単なる高速な手戻りやリリース頻度の多さだけで測れるものではありません。その背後には、ボトルネックを抑えるための地道な工夫、MVP的な割り切り、そして初動力を含む包括的な戦略があります。

MyTHは、AIを活用した新たな開発手法を模索しながら、この「爆速」の本質に挑み続けたいと考えています。より多くの人に価値を届けるため、真に意味のある速度を追求する。そのプロセスを、これからもこのブログで共有していきます。

引き続き、どうぞお付き合いください。